妊娠可能な女性が稀に罹患する疾患【リンパ脈管筋腫症の症状】

妊娠可能な女性が稀に罹患する疾患【リンパ脈管筋腫症の症状】

リンパ脈管筋腫症の症状

「LAM」と略されるリンパ脈管筋腫症は、息切れや呼吸の苦しさといったものが、主な症状となります。

特に運動時や、罹患することの多い女性の場合は家事などを行っている際に、この症状が出やすくなることがあります。
息切れの程度は患者によって異なるものの、激しい咳や血痰などが見られることもあり、その症状は喘息にも似ているため、比較的異常を感じやすい疾患ともいえるでしょう。

胸膜が破れ肺から空気が漏れ出ると「気胸」と呼ばれる状況へと陥りますが、これはリンパ脈管筋腫症を罹患した人の70%ほどが経験する症状でもあります。
この気胸よりも割合は少ないのですが、胸などに水が貯まることによる息苦しさなどの症状が出るケースもあります。
全体の1割ほどにとどまるものの、リンパ脈管筋腫症の特徴的症状の一つとなるでしょう。


引用:http://www.afinitor.jp/tsc/particulars/particulars07.html

罹患する原因

結節性硬化症と呼ばれる疾患があります。
これも難病の一つですが、これはTSC遺伝子の異常により発症することがわかっており、リンパ脈管筋腫症も同様に、このTSC遺伝子が原因で罹患し、各症状を引き起こします。
この結節性硬化症と一緒にリンパ脈管筋腫症が発症するケースもありますが、それとは別に単独で症状が出るケースもあります。
LAM細胞が増殖することでリンパ脈管筋腫症に罹患するわけですが、これがTSC遺伝子の異常が原因で形質を変えることにより、各症状が現れます。

このLAM細胞自体にタンパク質を分解する酵素の分泌が認められ、この細胞の増殖により当該酵素の量が増え、肺に悪影響を及ぼすことによって気胸のような症状が出現します。
全ての原因が究明されているわけではありませんが、認められた原因の一つとして押さえておくといいのではないでしょうか。

疾患の概要

リンパ脈管筋腫症の英名は「lymphangioleiomyomatosis」、略して説明しているように「LAM」と表現されています。

原因や症状も概ね説明した通りですが、この病気の罹患者は女性に多く、その中でも妊娠の可能性を持った女性、つまり若い女性が多く罹患することが知られています。
リンパ脈管筋腫症を発症する女性の平均年齢は30代半ばとされてはいますが、閉経後にも同様の症状を発症する女性がいます。
また、男性の中にもこの疾患を罹患する人が非常に稀ではありますが存在しています。

リンパ脈管筋腫症が世に知られるようになったのは1930年代のことです。
その際にはまだ名称は付けられていませんでしたが、海外では1977年に、日本ではそれに先駆けて1970年に、現在とは異なる名称(び慢性過誤腫性肺脈管筋腫症)ではありますが、すでに疾患名が付けられていたようです。

罹患者数

数万人程度の罹患者であっても難病と指定され原因が特定されない疾患が多くある中、リンパ脈管筋腫症の罹患者数は現在700人~800人程度と非常に珍しい疾患です。
人口100万人あたりで見ると、日本では大体2人~4人程度がリンパ脈管筋腫症患者であると推測されており、海外でも同程度という報告があるため、人種による差異はさほど認められないと言ってもいいでしょう。

ただ、結節性硬化症と合併症としてリンパ脈管筋腫症を罹患する人は数千人規模で存在していると見られており、これも含めれば罹患者数は大幅に増えることになります。

治療とケア

喘息などと似た症状が出るリンパ脈管筋腫症ですが、その場合には閉塞性換気障害である可能性が高まるため、もし検査などによりそれが確認されれば喘息治療などにも用いられる気管支拡張薬で症状を抑えることが可能です。

さらに症状が悪化し、自力で十分な量の酸素の取り入れが困難となった場合には酸素の吸入なども行います。
気胸の程度や症状などによっては、メスを入れて治療しなければならないケースも出てきます。
さらには肺移植により治療が行われることもあり、治療法は症状や程度によって大幅に変わってくると言えるでしょう。

最近ではシロリムスを投与することで症状の改善が見られることが報告されています。
女性に多い疾患であることからホルモン療法の効果も期待され一部効果があるとは言われましたが、治療法としての確立にまでは至ってない点も押さえておきましょう。

予後

症状の出方や病状の進行具合には個人差があります。
少しずつ呼吸が苦しくなり、外科的治療や移植などが必要な場合もあれば、特にそうした大掛かりな治療を必要とせずとも問題がないケースもあります。

紹介したように症例数が非常に少ないため、予後が不明の点も多々あるものの、10年後の生存率は8割~9割ほどとされています。
また、残りの1〜2割は他の疾患による死亡の可能性も否定はできないため、適切な治療を行えば命を脅かすような疾患ではないと言って差し支えないでしょう。
ただ、肺移植を行ったとしても再発するケースも報告されています。予後がどうなるかは、個別に慎重に見ていくしかないのかもしれません。

難病【まとめ】カテゴリの最新記事