皮膚が魚の鱗のようになる【魚鱗癬の症状】

皮膚が魚の鱗のようになる【魚鱗癬の症状】

魚鱗癬の症状

皮膚の表面が厚くなる、加えて、固くなるなどが魚鱗癬の主な症状です。
水ぶくれができてしまうケースもあれば、皮膚が赤くなってしまうケースもあります。
こうした症状が全身に現れるのが魚鱗癬の特徴です。

まぶたや唇などにも症状が出ることがあり、程度が重い場合にはこうした部位がめくれ上がるなどの症状も見られます。
また、耳の変形も一部の罹患者で見られるなど、症状の出方は様々です。

目で見える症状は主に体の表面、つまり皮膚が魚の鱗のようになる点に特徴があり、臓器にまでこの疾患の影響が及んでいるケースもあります。

引用:https://www.hindustantimes.com/india-news/cause-symptoms-and-cure-what-is-harlequin-ichthyosis/story-damec4iY0rRTg7Ssq7psGL.html

罹患する原因

魚鱗癬に罹患する原因は、その全てが解明されているわけではありません。
遺伝によるものであることは概ねわかってはいるものの、まだ不明な点も多いのが現状です。
ある遺伝子の異常により皮膚の働きが奪われ、あるいは過剰になり、各症状が現れると考えられています。

細胞分化が正常に行われない、脂質の産生に異常をきたす、外的要因から守るための皮膚の機能が低下する、水分の蒸発を防ぐ機能が著しく低下するなどが原因で、魚鱗癬の発症に至ります。

この疾患の原因になる遺伝子で現在わかっているものは、ケラチン1やケラチン10、ケラチン2、さらにはトランスグルタミナーゼ1、ABCA12、ALOXE3、ALOX12B、NIPAL4、CYP4F22などとなっています。
こうした遺伝子と疾患との関連性が明らかになっていくことで、魚鱗癬の全容解明にも期待が持てるようになるでしょう。

疾患の概要

魚鱗癬は先天性の疾患、つまり遺伝要因により引き起こされる難病です。
症状は説明した通りですが、これら症状によりさらに細かく分けられています。

  • 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(表皮融解性魚鱗癬)
  • 葉状魚鱗癬
  • 道化師様魚鱗癬
  • 魚鱗癬症候群

この中で最も重い症状が現れるのが道化師様魚鱗癬です。
魚鱗癬症候群は皮膚以外の部位にも症状が現れ、それが多様である点が特徴です。

これらはそれぞれどのようなことが原因で引き起こされるのか、その要因には違いがあることがあります。
例えば、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症に関しては、もし父親か母親のうちのどちらかがこの疾患を患っていた場合、子供にその遺伝子も引き継がれ、2分の1の確率で同じ魚鱗癬を罹患するとされています。

性差はないとの報告がありますが、例え両親がこの疾患を患っていなかったとしても、子供が魚鱗癬になるケースがある点には留意すべきです。
また、症状が異なれば遺伝する仕組みも異なることもわかっています。

罹患者数

子供の頃から症状が認められ、また、見た目で明らかに魚鱗癬であること(皮膚に異常があること)が認識できるので、比較的患者数は把握しやすいと見られているものの、しかし、はっきりとした数字は出てきていません。成長するに従って症状が軽くなることも関係しているのでしょう。

現在では、おそらく日本国内に200人前後の罹患者がいるのではないかと推定されています。
この数字からも、非常に症例数の少ない珍しい疾患であることがわかるはずです。

治療とケア

魚鱗癬を完治させる治療法は、未だ発見・開発されてはいません。

この疾患を治すという目的ではなく、症状を和らげることを主眼に置いた療法が用いられるのが一般的です。
サリチル酸ワセリンや尿素剤などを患部に塗るといった治療がオーソドックスなものであり、皮膚に過度な乾燥が見られるケースが多いことから保湿剤が塗られることもあります。

ただ、サリチル酸ワセリンや尿素剤を塗ることで不快感や強い刺激を感じることもあるため、幼児に関してはメンタル面でのケアも必要になってくるでしょう。
量が増えれば発熱や吐き気などの症状も出る可能性が高まります。
バランスを考慮しながら治療を行っていくことが求められます。

点滴を必要とするケースもありますが、このような場合でも体温管理やウイルス感染などを注意深く見ながら行うことが求められ、治療には細心の注意を払うことも必須となります。
魚鱗癬は成長に悪影響を与える可能性の高い疾患でもありますから、栄養剤などの服用や投与を必要とするケースも出てくるでしょう。

予後

基本的には、魚鱗癬に罹患すると、一生そのまま過ごすことになります。
上でも紹介したように現代の医学では完治させる治療法が確立されておらず、遺伝要因の疾患でもあるため、症状が劇的に改善することはほぼないでしょう。
ただ、成長するに従って症状が軽くなる事例は認められています。
こうした事例からも研究が進めば、より多くの患者の症状を軽くするような治療法も今後発見されるかもしれません。

症状が重い場合には生まれてすぐ、あるいは乳幼児期に死亡することもあるでしょう。
感染症などを発症すればその可能性はさらに高まりますが、しかし死亡するケースは稀です。
生命予後という観点から見れば、決して悪くはありません。

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