予後不良疾患の代表格【筋萎縮性側索硬化症の症状】

予後不良疾患の代表格【筋萎縮性側索硬化症の症状】

筋萎縮性側索硬化症の症状

筋萎縮性側索硬化症は神経細胞に問題が発生するため、運動機能が著しく低下するといった症状を引き起こします。
具体的には、手足の麻痺、あるいはコミュニケーション障害及び嚥下障害などから始まります。

手足の麻痺は運動障害のことですが、この疾患を患った人の70〜80%の割合でこの症状の出現で診察を受け、筋萎縮性側索硬化症であると診断されます。
これまで持てていたものが持てなくなる、手足が思い通りに動かせなくなる、歩きにくいかったり走りにくかったりするなど、違和感から発覚することが多く、放置していると手足が腫れたり筋肉に痛みを感じたりなどが出てくることもあるでしょう。
いずれも初期症状で、この疾患はここから徐々に進行し体を動かせなくなることで筋肉量が減り、徐々に手足が細くなってしまいます。

手足の違和感よりも先に、舌が回らなくなり話しにくくなる症状が出る人もいますが、特にラ行やパ行などの発音が不明瞭となるケースが多いです。
口や喉周りの筋肉量も低下するため食べ物などを飲み込むことが困難となるわけですが、これもこの疾患の代表的症状と言えるでしょう。

似たような症状の疾患としては、脊髄小脳変性症が挙げられますが、脊髄小脳変性症は小脳に異常が発生する疾患なので、全く違う疾患と言えます。


引用:https://matome.naver.jp/odai/2140853109272554301/2140853664476675703

罹患する原因

筋萎縮性側索硬化症を発症する原因には複数の説がありますが、なかなか一つには絞りきれていない現状があります。
もしかしたら、他に原因があるのかもしれません。
つまり、不明である状況が続いているのです。

ただ、運動神経細胞に異常があることだけはわかっています。
いわゆる運動ニューロンの異常により、筋肉を思い通りに動かすことができなくなることで手足や舌、喉の筋肉が弱り始めるわけです。
筋肉そのものに異常が発生するわけではなく、あくまでも運動ニューロンに問題があると理解しておかなければいけません。

罹患した人の遺伝子を調べると、いくつかの遺伝子に異常があることは報告されています。
スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)、TDP43, FUS, optineurin, C9ORF72, SQSTM1, TUBA4Aなどがそれに該当するのですが、何が原因でこうした異常が生まれるのか、あるいはこれらがどう運動ニューロンの障害へと繋がっているのかについては研究が続けられているところです。

疾患の概要

一般的にはあまり馴染みのある疾患ではないものの、しかし難病の中ではドラマや映画、小説、あるいはドキュメンタリーなどで取り上げられることも多いため、特に「ALS」という表現で記憶している人もいるかもしれません。
これが筋萎縮性側索硬化症のことで、非常に珍しい病気として認知が少しずつ広がっている状況でもあります。

この疾患で問題となるのは運動ニューロンのみのため、知覚神経や自律神経に関しては正常に作動する状態が続きます。
つまり、体に触れられればその感覚を感じることが可能で、仮に叩かれたりすれば、その痛みを感じることもできます。
通常であれば痛みを感じた際には反射によって体を動かすことができますが、筋萎縮性側索硬化症患者は運動ニューロンが正常に動かないために、それができないのです。
また、五感への影響もほぼなく、記憶力や学習能力等が低下するなども通常は見られません。

罹患者の遺伝子から異常が見つかってはいるものの、遺伝とは無関係で発症することもあります。
ただ、家族性ALSの存在は認められているため、もし家族にALS患者がいる場合には留意が必要でしょう。

罹患者数

日本国内の筋萎縮性側索硬化症患者の数は、1万人前後と言われています。
増加傾向にはありますが数百人単位で年々増えている状況であり、急激に患者数が増えることはありません。

性差が認められる病気で、男性は女性よりも1.5倍かそれよりも低い程度ではあるものの、多くの罹患者がいる状況です。
症状が現れるのは50代~70代が最も多いく、特に60代の後半に集中しています。
ただし、若い人でも発症するケースはあるので、その点の認識もしておく必要があるでしょう。

治療とケア

根本的な治療法や完治させる治療法は今のところありません。
そのため、緩和目的のケアにとどまるのが現実です。

進行をできる限り遅くするためにリルゾールを処方することがあります。
あとは、筋萎縮性側索硬化症により現れる各症状を和らげる対症療法を行うしかないでしょう。

リハビリを行い筋肉や関節の動きを促すことにより、痛みを軽減させることが可能です。
精神的ケアも欠かせません。呼吸が弱くなれば吸入が必要になりますし、飲み込む力が弱まるので痰を取り除く作業も欠かせません。

予後

根本的治療が確立されていないため、一度筋萎縮性側索硬化症となれば、死を待つほかありません。
説明したようなケアは行うものの、現在のところは、ほぼ全ての人が死亡に至ります。
呼吸には筋肉が関係し、それが動かなくなることで呼吸そのものが困難となるためです。

延命措置を取らない場合には5年以内に死亡するケースが大半ですが、進行速度が遅い場合には、10年以上生存することも可能で、実際にそうした事例も見られます。

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